あらすじ
海底に広がる巨大な帝国アトランティスを築いた海底人たちの王女を母に持ち、人間の血も引くアクアマンは、アーサー・カリーという名の人間として地上で育てられた。やがて、アトランティスが人類を征服しようと地上に攻め入り、アクアマンは、アトランティスとの戦いに身を投じていく。
レビュー
『アクアマン』はパワフルで様々なジャンルが融合した新時代のジェットコースタームービー
『アクアマン』を観ていると一本で何種類かの映画を一気に観たかのような錯覚に陥ります。様々な種族が入り乱れて戦う様は『ロードオブザリング』、海中戦は『スターウォーズ』、アイテム探しは『インディジョーンズ』、さらにホラーや怪獣映画の要素まで加わり、普通に考えればごちゃごちゃして纏まりが無くなりそうですがこの映画では不思議とそうはなっていません。むしろその一つ一つがパワフルで魅力的なものとなっていて合間合間でだれるタイミングが無いので(つまらなくなりそうな場面で取り敢えず爆発を起こすなど)、また通常だるくなりがちな主人公のオリジンを編集を工夫することでスムーズに観ることができるようになっています。
これまでのDCEUの映画は主人公の一旦立ち止まって悩む傾向が多かったですが、今作のアーサーはそうはしません。良い意味で軽いのです。また、常に動きながら反省、成長し物語はどんどん前に進んでいくので観客の感情も止まる暇が無くジェットコースターに乗っているような感覚になります。
これまでのDCEUと共通するところもあります。スーパーマンはクリプトン生まれ地球育ち、ワンダーウーマンはアマゾネスの中で一人神のような存在の主人公が人間界に踏み出す話でした。アーサーも人間とアトランティス人のハーフであり、皆複数のルーツを持っていたりアイデンティティに揺れ動く主人公たちです。今作の魅力はそれを一歩推し進め、この要素こそがアクアマンをヒーローにしているという点です。地上でメラがバラを食べ物だと思い食べるシーンがありますが、下手な映画だと「それは食べ物じゃない」と突っこんで笑いをとると思うのですが今作ではアーサーはメラの行動を否定せず一緒にバラを食べます。何気なく微笑ましい場面ですがアーサーが異文化を受け入れる人物だとスマートに表現しています。(アーサーの父も金魚を食べようとするアトランナを非難しなかったことからアーサーの寛容さは人間である父の影響が大きいとわかる。)この映画では複数のルーツを持つからこそ異文化への理解があり対立する世界を繋げる救世主となれることを描いています。演じるジェイソンモモア自身も複数のルーツを持っており役に説得力を持たせています。
キャストは皆素晴らしく特に野性味と誠実さを兼ね備えたモモア、美しさと強さを兼ね備えたアンバー・ハードはハマっています。『狼の死刑宣告』や『ワイルドスピード』にもみられたジェームズ・ワン独特のカメラワークを駆使したアクションなども素晴らしいです。
不満点としては仕方のないことですが壮大な世界観を説明するための説明ゼリフが多いことです。また、ジェームズ・ワンが独立した映画を作りたいということもありユニバースとしての関連性を示す場面はほとんど無く、矛盾点もあります(そこはDCEUの好きなところでもある)。
まとめ
『アクアマン』は説明ゼリフが多く他作品との矛盾点もありますがそれを欠点としないほどの魅力に溢れ、次から次へ新しい展開が起きるので143分があっという間に感じられるジェットコースタームービーになっています。異文化への理解というタイムリーな話題を説教臭くなくこれだけのエンタメ性を持って表現した新しいアメコミ映画の傑作です。