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『X-MEN: ダーク・フェニックス』 レビュー(ネタバレ注意)

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あらすじ

X-MENのリーダーであるプロフェッサーXの右腕として、メンバーからの信頼も厚い優等生のジーン・グレイだったが、ある宇宙ミッションでの事故をきっかけに、抑え込まれていたもうひとつの人格「ダーク・フェニックス」が解放されてしまう。ジーン自身にも制御不能なダーク・フェニックスは暴走をはじめ、地上の生命体が全滅しかねない、かつてない危機が訪れる。

X-MEN:ダーク・フェニックス : 作品情報 - 映画.com

 

レビュー

 

 

 

 

 

 

「X-MEN: ダーク・フェニックス」はシリーズの原点に立ち戻ったようなパーソナルな最終章。

 

 スピンオフ作品を合わせてX-MENシリーズ第12作品目にして最終作。監督・脚本は「X-MEN: ファイナル ディシジョン」以降脚本や製作を務めてきたサイモン・キンバーグ。全体的なトーンはシリアスでリアル志向。本作でメインとなるのはX-MENの一員であるジーン・グレイ。自分の力を抑えられない彼女の苦悩を軸に彼女の暴走に対して周囲がどう対応するのか?が物語の焦点にもなってきます。特にチャールズ・エグゼビアは重要な立ち位置に置かれていて、ここの描き方は個人的には良かったです。チャールズは人間とミュータントの共存を目指すあまりミュータントたちに自分の理想を押し付けてしまい結局は自分たちを抑圧しようとする人類と同じではないか?「君は壊れていない」と幼いジーンに言うチャールズ。でも彼はジーンの能力に蓋をしてある意味無理やり直そうとしてしまいます。自分とは違う存在、受け入れがたい存在に対してどう向き合えばよいのかというX-MENのテーマをジーンとチャールズの関係を通して描いていて良かったです。指導者の立ち位置にいる人物の独善的行動が結果的に悲劇をもたらすという展開はよくありますが今作でのチャールズは自らのとった行動に向き合っていてそこも好印象でした。肝心のジーンですがとてもよかったです。薬物依存者なども参考にしたというソフィー・ターナーの演技が素晴らしく制御できない力に対する恐れや戸惑いや高揚感など彼女の感情がスクリーンからひしひしと伝わってきました。彼女に限らず俳優の演技は皆素晴らしくこのしシリーズ(特に新シリーズ)の魅力の一つだと思います。本作は20年近く続いてきたアメコミ大作シリーズの最終作にしてはパーソナルでこじんまりとしていて、物足りないと感じる人も多いでしょう。特に同じくマーベル映画シリーズの一つの区切りである「アベンジャーズ/エンドゲーム」がファンサービス満載でまさにこれまでの集大成といった感じの映画だったのでそういう要素を求めると期待外れに終わると思います。ですが個人的には今作のテイストはこれで良かったと思っています。ただのスーパーヒーローものではなくマイノリティの人々を描いてきたX-MEN。パーソナルな物語を最終作に持ってきたことはX-MENシリーズとして良い着地だったと思います。終始シリアスな今作ですがラストはこれまでシリーズが扱ってきた問題に対する希望のあるアンサーで締めくくっていて良いと思いました。

 

 アクションシーンについては地に足のついたものになっていて、特にマグニートー(エリック)関連のアクションが良かったです(マグニートーのアクションに関しては今作以外でも毎回映像的に面白いものになっていると思います)。またナイトクローラーの瞬間移動を利用した見せ場も楽しかったです。

 

 音楽は少し前までもうヒーロー映画はやらないと言っていたハンス・ジマー。緊張感を醸し出していて作品をきっちりと支えてくれています。お馴染みのテーマが流れないのは少し寂しいですが今作はそういう雰囲気の映画ではないのでマイナスポイントにはならなかったです。

 

 不満点は上で言ったようなテーマ性を上手く表現出来ているかといえば必ずしもそうはなっていないことです。例えばその要因としてキャラクターの動機に不明な点が多いです。特にエリックに関しては「もう復讐はやめた」と言いながらあることがきっかけであっさり復讐に踏み切ったかと思えばこれまたあっさりと改心したりと描き込みが足りないなと感じてしまいました。エリックはチャールズと対を成しシリーズの根幹のテーマにも関わってくる重要なキャラクターなのでそこはもっと丁寧に描いて欲しかったです(演じるファスベンダーの素晴らしい演技で何となく良く見えてしまいました笑)。また丁寧にキャラクターの心情を描いていた前半パートに比べ後半パートは結構駆け足に感じてしまいました。その理由の一つはおそらく今作のヴィランとして登場するエイリアンですが、彼らの動機もイマイチ伝わってきませんでした(居場所を失ったジーンに居場所与え、彼女が”ダークサイド”に傾く要因としては機能していたように見えた)。あとは今作に限ったことではないですがラストの決着をCGエフェクト満載にして取り敢えず派手にしている映画が最近多いように感じ少し残念に感じました。

 

まとめ

 

 「X-MEN: ダーク・フェニックス」は最終作だからといってファンサービスに逃げずに原点に立ち戻りシリーズのテーマを問い直した意欲作。手放しでは褒められないけど単に失敗作というにはもったいない観る価値は十分にある映画です。