otaku8’s diary

映画のこととか

第35回TIFF『ライフ』三時間の地獄めぐり(ネタバレなし)


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 東京国際映画祭でエミール・バイガジン『ライフ』を観た。過去作の『ザ・リバー』は鑑賞済み。本当はその前の『ハーモニー・レッスン』を観たいのだが、なかなか観ることが出来ない。『ライフ』はIMDbでのスコアが4点台だったりと、事前に評価が低いことは知っていたので、期待値は下げて臨んだ。

 観てみると、低評価の理由は頷けた。主人公がある失敗(誰にでも起こりうるから怖い)をきっかけに、ひたすら堕ちる様子を三時間みっちり描く。しかもメリハリもあまりないので三時間観続けるのが辛く感じる人も多いだろう。また、作中での女性の扱いは、真意としてそれが肯定的か否定的に描かれているかに依らず、表面上は前時代的なので拒否反応を示す人も多そうだ。

 『ザ・リバー』ではカッチリ構図をキメてくる作品だったが、今回ではもう少し「揺らぎ」が入っており、それが人は言葉では繕っても、内面は倫理的に完善ではないという本作の要素と被る。『ザ・リバー』では、川を横切るように泳ぐ人間が水流の方向へ流されていく場面が印象的だったが、思えば今回の『ライフ』も、ある目標を目指しながらも人生の流れの中で側方へ流されていく男の話であった。
 主人公を演じたイェルケブラン・タシノフが非常に良い。知的な感じがありつつ、周りに流されていく受身な雰囲気。それが逆に、彼の細身な身体を使った「ダンス」による自己表現を際立たせていた。
 『ザ・リバー』は文明(テクノロジー)から隔絶したコミュニティに突如「文明の権化」が現れる話だった。今回も同様に、テクノロジーの存在が強調されていたが、バイガジンのなかのテーマなのか。