東京国際映画祭で『セルヴィアム ―私は仕える―』を観た。ルース・メイダー監督作品は『モニタリング』を鑑賞済み。
結論から言えば、悪い意味で期待を超えてこなかった。本作のテーマはキリスト教それ自体というよりは、何かを盲目的に信じ(→キリスト教への過度な信仰)、自分で考えて行動しないことの危うさというところにあると思う。本作で不気味な存在感を放っているマリア・ドラグシ演じるシスターは、そのような「信者」として登場する。
本作には前作『モニタリング』と重なる部分があり、ここにルース・メイダーの作家性、描きたいテーマがあると読めるが、残念ながら設定を活かしきれておらず中途半端になっているところも前作と同じだ。前述のテーマを描くには冗長な部分が多いために尺が足りなくなっているし、ポーカーフェイスなシスターが感情を露わにするとある場面では、彼女のドラマが垣間見えるが、それも中途半端に終わっている。ホラー的な演出も多いが、それは表面上の演出だけであって、本質的に恐怖を描こうとしていないのでホラーにはなっていない。それこそホラー調の劇伴が煽り立てるOPクレジットや不気味なシスターの存在感に期待値が上がったが、それも含めて思わせぶりな映画に終わっており、勿体無いなという印象だ。