otaku8’s diary

映画のこととか

第35回TIFF『ヌズーフ/魂、水、人々の移動』壁の穴から見出す希望(ネタバレなし)


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 東京国際映画祭で『ヌズーフ/魂、水、人々の移動』を観た。このサムネとタイトルが印象的で、とても観たかった作品。これは結構良かった。ユース部門に相応しい映画。

 空爆により主人公一家の壁に大きな穴が開く。面白いのは、空爆自体は悲劇であり作中でもそう描かれているが、一方で長引く戦争や家父長制などによってそもそも家の内側には閉塞感が存在しており、それが壁の穴によって打破されるところだ。穴を通じて外の世界と繋がることで希望が見出されていくのだ。タイトルに「魂、水、人々の移動」とあるが、文字通り穴を通じた移動が映像として描かれており、その見せ方が良かった。

 劇中でも言及されるのだが、現実世界はより厳しく本作はそのリアルを伝える映画ではない。全体的に前向きな作りであり、所々にポップな要素もある。それでも、映画なのだから「希望は良いものだ」(『ショーシャンクの空』)と示す本作のような作品もありだと思う。