otaku8’s diary

映画のこととか

第37回TIFF『士官候補生』感想~清 feat. 『フルメタルジャケット』~(ネタバレなし)


www.youtube.com

 東京国際映画祭でカザフスタン映画『士官候補生』を観た。カザフスタン映画といえば、東京国際映画祭関連だとエミール・バイガジン『ライフ』が記憶に新しい。監督は『イエロー・キャット』のディルハン・イェルジャノフ。

 個人的に、これは結構厳しかった。士官学校というマチズモに支配された限定空間の中で行われる圧制が描かれると思いきや、次第に黒沢清的ホラーに転化していくが、士官学校ものとしてもホラーとしても中途半端で、あまり面白味を感じることはできなかった。『フルメタルジャケット』『エリートスクワッド』等の映画があるなか、本作におけるマチズモ空間の描写は結構生ぬるい。ホラーとしてもたびたび現れる霊?のCGが安っぽく、同じような演出の反復に飽きてくる。強調されるデカルトの引用も、あまり効果的に思えない。

 主演のアンナ・スタルチェンコは、その佇まいが全体の湿っぽくも乾いた空気感に合っていて良かったし、ソ連の狂信者が出てくる時代不詳の設定や画面の片隅に被写体を寄せて余白を作り出す画面構成は面白かったが、いずれにせよ、これで二時間は長いと感じた。100分以内に締まっていれば、ジャンル映画として良かったかもしれないが。