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『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』感想~人生を楽しめ~(ネタバレなし)

 『ブリジット・ジョーンズ』最新作を観た。1作目を初めて観たのは、Twitterのフォロワー氏が熱烈に推していたためであるが、それから早6年が過ぎた。ブリジットが2児の母となった4作目で強く感じさせられるのも、このような「時の流れ」であった。

 本作でまず驚くのは、製作陣の面子である。監督はやはり壮年期の母親を描いた『トゥ・レスリー』のマイケル・モリス。『ベター・コール・ソウル』などにも関与している実力派である。脚本には3人クレジットされている。特に注目したいのは、本作がシリーズ初担当となるアビ・モーガンである。モーガンは映画では『マーガレット・サッチャー』『未来に花束を残して』といった主体的な女性像を押し出した作品を手掛けている。レネー・ゼルヴィガーの前作が『ジュディ 虹の彼方に』であることも相まって、いずれにせよ、コメディ色を前面に押し出すよりも、「ブリジット・ジョーンズという女性の”現在”」を描こうという意志を感じる。

 実際に映画を観てみると、シリーズのラブコメ精神は貫かれながらも、やはりブリジットの人生に正面から向き合った、ドラマ性の高い作品だった。序盤、まず涙腺を刺激させられたのだが、彼女にとって大切な2人の人物が亡くなったという事実をいきなり突き付けられる。亡きマーク・ダーシーに彼女がどのように向き合うのか、病床で父コリンが告げた「ただ生きるな。楽しめ」という言葉の意味、過去/現在について再考させるようなこの2つの要素が本作の軸となる。

 ブリジットは子育てに追われる母となり、これまでのような恋物語を展開させる余裕もない。彼女の家に現れた友人や家族の幻影たちは彼女迫り、好き勝手にアドバイスを与える。このような演出から、生活の落ち着きを得ながらも大きな喪失を経験したブリジットが直面している行き詰まりのようなものが伝わる。そんななか、ひょんなことから彼女は再び恋物語に駆り出されていく。恋物語の型自体はこれまでと似ている(男vsブリジットvs男の構図)が、亡きマーク・ダーシーの面影は常に画面から感ぜられるし、1作目から24年の歳月が経過しているという重みも常にそこにある点で、やはりグッとくるものがある。ブリジットも彼女の周りの者たちも、その老いが生々しく映されている。しかし、その重みを隠さないからこそ、この映画が持つ前向きな姿勢が際立つ。

 幻影たちがブリジットを囲む序盤とは対照的に描かれる最終盤。過去を尊重しつつ、現在この瞬間を大切にして生きていくという前向きで実存的なメッセージが読み取れる、「人生を楽しみ、ありのままの自分を愛せ」と謳うような感動的な着地だった。