※重要なネタバレはしないですが、ストーリーには触れるので何も知りたくない方は読まないでください。
ジュリア・デュクルノーの新作『Alpha』を観た。カンヌでは賛否が激しく分かれたようだが、個人的には、そこまでの熱量を持って賞賛あるいは批判するような作品ではなかった。
『ジュニア』『Raw』『TITANE/チタン』と同じく、少女の心的成熟と肉体変容が描かれるものの、上記3作品から受けた印象とは大分違う。本作も前半は少女アルファの身体変容から始まる。彼女は無意識のうちにタトゥーを掘られてしまい、その傷から流れる彼女の"血"に対する周囲の恐怖心が描かれる(血に対する恐怖、は本作が家族=血脈の話でもあることに繋がるか)。ここはペストやコロナパンデミックが重ねられるところである。
本作のもう一つの身体変容は"石化"である。感染すると身体が岩のようになってしまう病が蔓延しているのだ。まず、これら2つの身体変容があまり噛み合っていないように思う。"石化"もビジュアライズは素晴らしかったが、過去作ほどメタファーとして機能していない。
後半にいくにつれて、アルファ個人の話から家族の話にシフトしていく。その物語自体は俳優陣の素晴らしさもあって見応えのあるものになっているが、映画全体で見ると、やはりぼやけた印象だ。『TITANE/チタン』でヴァンサン・ランドンが踊るシーンのようなキャッチーさも弱い。
とはいえ前述のように映像表現(特に心象風景のビジュアライズの良さはデュクルノーの新境地だと思う)や俳優陣(ゴルシフテ・ファラハニはとの作品でも良い)は素晴らしく、一定の面白さは担保されていると思う。
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