otakuiyの映画拾い|映画レビューと雑記

映画のレビューなどをつらつらと書きます。otakuiyによる映画拾い。

『シラート』感想〜「レイヴ」という場所〜(ネタバレあり)

 東京国際映画際でも話題になっていた『シラート』(『Sirāt』)を観た。ビジュアルは『マッドマックス 怒りのデスロード』みたいだし、タイトルも「Sirat」だから『ザ・レイド』でお馴染みの格闘術シラットを思わせる。なのでアクション映画かと勘違いしていたのだが、そうではなかった。とはいえ、『マッドマックス 怒りのデスロード』はある意味近いし、『恐怖の報酬』にも似ている。

 行方不明の娘を探す父子と、彼らが同行するレイバー達がレイヴ会場を目指すために砂漠を旅する話。冒頭のグルーヴ感あるレイヴシーンから惹き込まれる。一方、その雰囲気に明らかに馴染んでいない父親ルイスの対比が良い。彼がある一団に娘の居場所を訪ねると、「他の会場にいるんじゃない?」と言われたから行動を共にすることになるのだが、まさかそれがこんなに暴力的な道のりになるとは思わなかった。

 時折りニュース映像やラジオで挿入される情勢を片隅に置き、一行は旅を続ける。舞台となるモロッコは西サハラ紛争の影響を受けており、彼らにも次第にその現実が牙を剥いていく。その前兆として、ルイスの息子エステバンが乗った車が崖から落ちて彼が死亡するというシーンがあり、これは社会情勢ては関係のない事故だが、ヌルッと暴力的世界に以降するこの瞬間には流石に驚いた。

 冒頭でのルイスはレイヴとは距離があったものの、息子を失った彼は、レイバー達と一緒に音楽のリズムに身を委ね始める。一行のレイバー達は身体の一部を失っていたり、社会から周縁化された人々に見える。そういった者達にとっての連帯の場としてレイヴが存在することが、ルイスの描かれ方から示唆される。一方、そこは地雷源であり、レイヴは強制的に遮断される。そしてそのまま、タイトルが意味する「審判の日に天国と地獄を架ける橋」を承知するように、彼らが難民に紛れて乗る列車が映し出される。本作は音と映像で魅せる映画だが、こういうところに物語が描かれていたと思う。