otakuiyの映画拾い|映画レビューと雑記

映画のレビューなどをつらつらと書きます。otakuiyによる映画拾い。

『億万長者の不都合な終末』感想~金持ちのレッテル~(ネタバレあり)

 『億万長者の不都合な終末』を観た。監督は『プラットフォーム』のガルデル・ガステル=ウルティア。主演はメアリー・エリザベス・ウィンステッド。

 富裕層のみが感染する謎の疫病「リッチフルエンザ」が流行する。プロデューサーである主人公ローラは感染を避けるために、富を投げ捨てて逃避行を始める。

 設定は面白い。リッチフルエンザに感染した者は歯が白く光る。富裕層たちは感染から逃れるために、自らの資産を投げうっていく(これが対処法になるのかは甚だ疑問だが、人間焦ると理解に苦しむ行動をとるものだ)。コロナパンデミックの際には、感染者やその家族に対する「差別」ともいえる言動が散見されたが、本作では富裕層に対して同じような現象が起こる。特に「お前、金持ちだろう」「いや、私金持ちじゃありません」みたいな流れになっていくのは資本主義の崩壊の仕方として、中々面白かった。富が負のレッテルと化した世界で、主人公ローラも資本主義世界を逆行するように逃げ続けるのだが、彼女が貝殻で物々交換を試みるラストで示されるように、彼女はどこまでも資本主義の虜であり、それによって単なる貧富逆転の話になっていないのは良かった。人間の本質として、資本主義的構造が内面化されているともいえるだろう。

 魅力的な要素はあるものの、話は発散しており、かつ雑な語りで勿体ない印象が強い。また、もっとポップな感じにしても良いと思う。感染のメカニズムも曖昧なため、サスペンスとしても希薄であり、あまり映画として面白いとは言い難い作品だった。