otaku8’s diary

映画のこととか

2024-01-01から1年間の記事一覧

『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』感想〜欲望の焦点コロッセオ〜(ネタバレあり)

リドリー・スコットの新作『グラディエーターⅡ』を観た。正直なところ、リドリー・スコット作品という前提で見れば、そこまでビジュアル的に惹かれるショットはなく、前作をなぞったような部分はそんなに面白くはなかった。また、全体を通してかなり端折られ…

『The Substance』感想〜あなたはひとり〜(後半ややネタバレあり)

www.youtube.com コラリー・ファルジャ『The Substance』をMUBIで観た。あまり情報を入れずに臨んだということもあり、予想以上にジャンル映画的だったため驚いた。ジャンル映画としてはかなり面白かったし、ファルジャの手腕も確かなものではあったが、一方…

第37回TIFF『士官候補生』感想~清 feat. 『フルメタルジャケット』~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭でカザフスタン映画『士官候補生』を観た。カザフスタン映画といえば、東京国際映画祭関連だとエミール・バイガジン『ライフ』が記憶に新しい。監督は『イエロー・キャット』のディルハン・イェルジャノフ。 個人的に、これは…

第37回TIFF『英国人の手紙』感想~アンゴラ史の旅~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『英国人の手紙』を観た。詩人で小説家の主人公が、彼の父がナミブ砂漠に残した文書を探す旅に出かける話である。監督のセルジオ・グルシアーノは前作で『絶海9000m』という本作とは似ても似つかないパニック映画を撮ってい…

第37回TIFF『孤独の午後』感想~生死を演じる~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『孤独の午後』を観た。監督はアルベルト・セラ。アルベルト・セラ監督作といえば、一昨年の東京国際映画祭で扱われた『パシフィクション』が記憶に新しい。 otakuiy.com 本作はスター闘牛士アンドレス・ロカ・レイにスポッ…

第37回TIFF『彼のイメージ』感想~まなざしの不在~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『彼のイメージ』を観た。コルシカ独立運動を追うアンドレアを第三者の「彼」の視点で語っており、その意味でタイトル「彼のイメージ」なのだろう。 結論から言うと、微妙だった。第三者視点で語られる本作では、ナレーショ…

第37回TIFF『キル・ザ・ジョッキー』感想~生を取り戻す旅~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『キル・ザ・ジョッキー』を観た。監督は『永遠に僕のもの』のルイス・オルテガ、撮影はアキ・カウリスマキ組のティモ・サルミネンである。実際観てみると、この布陣であることが誰もが納得しそうな感じであった。 映像やテ…

第37回TIFF『叫び』感想~不可視化された暴力を”撮る”~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『叫び』を観た。監督は映画監督としては新進気鋭のペドロ・マーティン=カレロ、脚本は『理想郷』のイサベル・ペーニャ(これは驚いた)。アンドレア、カミラ、マリーという三人の女性が現代と過去で経験する恐怖を描いて…

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』感想〜ジョーカーという象徴〜(ネタバレあり)

高評価を得た『ジョーカー』だが、必ずしも絶賛一色ではなかった。「面白くない」「スコセッシ映画に頼り過ぎ」といった意見も散見された。それでも、前作が多くのフォロワーを獲得したことは事実である。劇中におけるアーサーが観客の共感を呼んだのなら、…

ローズマリー・ハリス映画について

ローズマリー・ハリス(Rosemary Harris)は稀有な俳優である。1927年9月19日生まれハリスは、現在96歳であり(2024年7月現在)、9月には97歳を迎える、世界最高齢の現役俳優のひとりと言っても過言ではない。また、ハリスは舞台、映画、テレビドラマのいず…

謝罪と訂正、注意喚起(ローズマリー・ハリス出演作品について)

以前、下記の記事でローズマリー・ハリスが出演した長編劇映画について紹介した。 otakuiy.com この中に、『恋に走って』(1989)という映画がある。同名小説を原作にした、カイリー・ミノーグを初主演に据えた青春恋愛映画である。この映画についてiMDbで調…

23年東京国際映画祭で観た映画の感想ツイート記録

2022年東京国際映画祭で観た映画については感想を書いた(※)のに、2023年については何故か完全にサボっていたので、当時の感想ツイートをまとめておく。 『エア』 『雪豹』 『ロクサナ』 『ミュージック』 『夏の終わりに願うこと』 『タタミ』 『開拓者た…

2024年上半期ベスト

2024年上半期ベストです。2月を『ベター・コール・ソウル』完走期間に設定していたため、昨年の上半期に比べて半分くらいしか観られなかった(後悔はしていない)。また、『オッペンハイマー』や『世界の終わりにはあまり期待しないで』などは昨年鑑賞作品な…

『ザ・ボーイズ』S4EP3(ネタバレなし)〜ホームランダーとサスペンス〜

ヒッチコックの映画論のなかに、「テーブルの下の爆弾理論」がある。「テーブル下の爆弾の存在を観客のみが知っている場合、サスペンスが成立する」というものだ。つい先日、『ザ・ボーイズ』S4第3話『我らは赤旗を掲げ続ける』を観ていたら、ふとこの理論を…

『オッペンハイマー』感想~原子軌道を幻視する~(ネタバレあり)

まず個人的に、クリストファー・ノーランは「世代」の監督である。ノーランの映画に初めて出会ったのは『バットマン ビギンズ』。それ以降ノーラン映画を追っていて、『ダークナイト ライジング』は人生で一番楽しみな映画だった(公開前にあそこまでネット…

『アクアマン/失われた王国』で『スーパーマンⅣ』を思い出す(ネタバレなし)

『アクアマン/失われた王国』を観た。本国での前評判があまりに悪かったので心して観たが案外面白かった(逆に前評判が異常に良い映画は蓋を開けてみたら…というケースもよく見る)。アーサーとオームのブラザーフッドものとして良かったし、アクションは前…