otaku8’s diary

映画のこととか

映画

『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』感想〜欲望の焦点コロッセオ〜(ネタバレあり)

リドリー・スコットの新作『グラディエーターⅡ』を観た。正直なところ、リドリー・スコット作品という前提で見れば、そこまでビジュアル的に惹かれるショットはなく、前作をなぞったような部分はそんなに面白くはなかった。また、全体を通してかなり端折られ…

『The Substance』感想〜あなたはひとり〜(後半ややネタバレあり)

www.youtube.com コラリー・ファルジャ『The Substance』をMUBIで観た。あまり情報を入れずに臨んだということもあり、予想以上にジャンル映画的だったため驚いた。ジャンル映画としてはかなり面白かったし、ファルジャの手腕も確かなものではあったが、一方…

第37回TIFF『士官候補生』感想~清 feat. 『フルメタルジャケット』~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭でカザフスタン映画『士官候補生』を観た。カザフスタン映画といえば、東京国際映画祭関連だとエミール・バイガジン『ライフ』が記憶に新しい。監督は『イエロー・キャット』のディルハン・イェルジャノフ。 個人的に、これは…

第37回TIFF『英国人の手紙』感想~アンゴラ史の旅~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『英国人の手紙』を観た。詩人で小説家の主人公が、彼の父がナミブ砂漠に残した文書を探す旅に出かける話である。監督のセルジオ・グルシアーノは前作で『絶海9000m』という本作とは似ても似つかないパニック映画を撮ってい…

第37回TIFF『孤独の午後』感想~生死を演じる~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『孤独の午後』を観た。監督はアルベルト・セラ。アルベルト・セラ監督作といえば、一昨年の東京国際映画祭で扱われた『パシフィクション』が記憶に新しい。 otakuiy.com 本作はスター闘牛士アンドレス・ロカ・レイにスポッ…

第37回TIFF『彼のイメージ』感想~まなざしの不在~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『彼のイメージ』を観た。コルシカ独立運動を追うアンドレアを第三者の「彼」の視点で語っており、その意味でタイトル「彼のイメージ」なのだろう。 結論から言うと、微妙だった。第三者視点で語られる本作では、ナレーショ…

第37回TIFF『キル・ザ・ジョッキー』感想~生を取り戻す旅~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『キル・ザ・ジョッキー』を観た。監督は『永遠に僕のもの』のルイス・オルテガ、撮影はアキ・カウリスマキ組のティモ・サルミネンである。実際観てみると、この布陣であることが誰もが納得しそうな感じであった。 映像やテ…

第37回TIFF『叫び』感想~不可視化された暴力を”撮る”~(ネタバレなし)

www.youtube.com 東京国際映画祭で『叫び』を観た。監督は映画監督としては新進気鋭のペドロ・マーティン=カレロ、脚本は『理想郷』のイサベル・ペーニャ(これは驚いた)。アンドレア、カミラ、マリーという三人の女性が現代と過去で経験する恐怖を描いて…

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』感想〜ジョーカーという象徴〜(ネタバレあり)

高評価を得た『ジョーカー』だが、必ずしも絶賛一色ではなかった。「面白くない」「スコセッシ映画に頼り過ぎ」といった意見も散見された。それでも、前作が多くのフォロワーを獲得したことは事実である。劇中におけるアーサーが観客の共感を呼んだのなら、…

ローズマリー・ハリス映画について

ローズマリー・ハリス(Rosemary Harris)は稀有な俳優である。1927年9月19日生まれハリスは、現在96歳であり(2024年7月現在)、9月には97歳を迎える、世界最高齢の現役俳優のひとりと言っても過言ではない。また、ハリスは舞台、映画、テレビドラマのいず…

謝罪と訂正、注意喚起(ローズマリー・ハリス出演作品について)

以前、下記の記事でローズマリー・ハリスが出演した長編劇映画について紹介した。 otakuiy.com この中に、『恋に走って』(1989)という映画がある。同名小説を原作にした、カイリー・ミノーグを初主演に据えた青春恋愛映画である。この映画についてiMDbで調…

23年東京国際映画祭で観た映画の感想ツイート記録

2022年東京国際映画祭で観た映画については感想を書いた(※)のに、2023年については何故か完全にサボっていたので、当時の感想ツイートをまとめておく。 『エア』 『雪豹』 『ロクサナ』 『ミュージック』 『夏の終わりに願うこと』 『タタミ』 『開拓者た…

2024年上半期ベスト

2024年上半期ベストです。2月を『ベター・コール・ソウル』完走期間に設定していたため、昨年の上半期に比べて半分くらいしか観られなかった(後悔はしていない)。また、『オッペンハイマー』や『世界の終わりにはあまり期待しないで』などは昨年鑑賞作品な…

『オッペンハイマー』感想~原子軌道を幻視する~(ネタバレあり)

まず個人的に、クリストファー・ノーランは「世代」の監督である。ノーランの映画に初めて出会ったのは『バットマン ビギンズ』。それ以降ノーラン映画を追っていて、『ダークナイト ライジング』は人生で一番楽しみな映画だった(公開前にあそこまでネット…

『アクアマン/失われた王国』で『スーパーマンⅣ』を思い出す(ネタバレなし)

『アクアマン/失われた王国』を観た。本国での前評判があまりに悪かったので心して観たが案外面白かった(逆に前評判が異常に良い映画は蓋を開けてみたら…というケースもよく見る)。アーサーとオームのブラザーフッドものとして良かったし、アクションは前…

2023年映画ベスト10

2023年に観た新作映画について。2023年(12/19現在)は旧作207本、新作144本の計351本を観ました。ベスト10はこちら #2023年映画ベスト #2023年映画ベスト10① オッペンハイマー②フェイブルマンズ③タタミ④ ヒトラーのための虐殺会議⑤ ダンジョンズ&ドラゴン…

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は結構グロテスクだったという話(ネタバレあり)

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を観た。レビューをザッと眺めたところ、ティム・バートンの『チャーリーとチョコレート工場』でジョニー・デップが演じたウォンカに比べ、本作のウォンカには毒がないという意見が大半な印象だった。ただ、自分は…

『ジョン・ウィック』と『ノーカントリー』は似ているという話

『ジョン・ウィック』シリーズは単なる復讐譚だろうか?確かに「復讐」は重要なキーワードであるが、最新作まで観て思ったのは、このシリーズは「機械論、決定論的世界から抜け出したい男の闘争(逃走)劇」だということだ。この意味で、僕の好きな『ノーカ…

『君たちはどう生きるか』感想(ネタバレあり)

自分は熱心なジブリファンでも宮﨑駿ファンでもない。という立場として、特段面白くはなかったが嫌いではなかった。映像も久石譲の控えめな劇伴も良かった。ただ、全体的には鈍重な話運びをしながらも最後は駆け足であり、中途半端な作品だという印象は拭え…

『ザ・フラッシュ』感想〜DC映画史を駆け抜く〜(ネタバレあり)

『ザ・フラッシュ』の感想です。期待よりは下回ったが好きな映画である…と言いたいが、文句もある。 良かったところはキャラクター同士のフィジカルなやりとり。核となるバリーと母の場面は良かったので、そこは安心した。世界のために母を死なせるという着…

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』感想 不満点を中心に(ネタバレあり)

基本的に満足していて、三部作の締めとしては申し分なかったが、敢えて気になった点を中心にして書く。 ギャグシーンで停滞する(映像でギャグを見せてから台詞で再度そのギャグを解説するためだろう)とか気になる点はいくつかあるが、一番は、ガーディアン…

『シャザム!〜神々の怒り〜』ヒーローという理想(ネタバレあり)

面白かった。前作は肉親から捨てられ孤独だったビリー少年が血の繋がらない「家族」の一員になる話だった。今回のビリーはその家族との繋がりを大切にするあまり、彼らを束縛してしまっている。シャザムは「中身は子供」のヒーローであるが、ビリーはもうす…

2023年2月に観た新作映画

まあまあ 『#エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』傑作!壮大なのにインディペンデントな作りで,どこか懐かしい感じ.ユニバースにより撮り方が変わるのも面白い(ウォン・カーワァイ的な映像だったり).多層的で複雑だが,このカオスな…

2023年1月に観た新作映画

ぴこぴこぽよぽよ 『非常宣言』時代性を取り入れたテーマは良く、航空機内外で物理的に断絶された人々がどうやって互いに関わり合うことができるのかという視点も興味深かったが、ディテールを詰めないまま色々な要素を詰め込んだ結果ボヤけた印象に。特に後…

『ヒトラーのための虐殺会議』(微ネタバレ) "普通の"会議の席で

IMDbによれば、ヴァンゼー会議の三度目の映画化(テレビ映画)らしい。純会話劇で、ひたすらナチス幹部らがユダヤ人をどうするか話し合う様子が映される。特にドラマチックな展開もないから退屈だと思う人もいるだろうが、個人的には大傑作であった。 ヴァン…

2022年12月に観た新作映画

傑作が多かった 『フランス』様々な"顔"で魅せるレア・セドゥの独壇場。ジャーナリズムを虚栄心を満たす場だと思っていそうな人気キャスターを演じる。「撮る」という暴力を行使し、自らもそれに曝されながら次第に"顔"の切り替えが効かず崩壊していく。…

2022年映画ベスト10

恒例のベスト決めの時期。例年通りギリギリまで悩んでいたが、発表します。ちなみに上半期ベストはこちら。点数化も上半期と同じ基準で行った。総合ベスト10は映画祭や試写で鑑賞した日本未公開作品を入れたものと除外したものを分けたが、それ以降のランキ…

『フラッグ・デイ 父を想う日』感想 ペンがいっぱい(ネタバレなし)

www.youtube.com ショーン・ペンの前作『ラスト・フェイス』は評判の悪さでスルーしてしまっていたが、監督作『イントゥ・ザ・ワイルド』は自分にとってかなり重要な映画なので、今回はあまり期待せずに観に行ってみた。一般評価は微妙で賛否両論という感じ…

『THE FIRST SLAM DUNK』感想 ミリ知らでも楽しめる傑作(微ネタバレ)

「スラムダンク」という作品の存在くらいは今までの人生の中で認知していたものの、それが一体何なのかは全く知らなかったし、惰性のせいで調べようともしなかった。この映画についても観るつもりはなかったのだが、やたらと評価が高く、「映像作品として素…

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』感想 キャメロンのライフワーク(ネタバレなし)

新宿バルト9のHFRドルビーで鑑賞。これは観る前から分かっていたことだが、現実/虚構の差などどうでも良く思わせてくる映像についてはやはり全編凄まじい。特に『タイタニック』で使っていたような水没するリアルなセットとモーションキャプチャーのアバタ…