otaku8’s diary

映画のこととか

映画考察

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』感想〜ジョーカーという象徴〜(ネタバレあり)

高評価を得た『ジョーカー』だが、必ずしも絶賛一色ではなかった。「面白くない」「スコセッシ映画に頼り過ぎ」といった意見も散見された。それでも、前作が多くのフォロワーを獲得したことは事実である。劇中におけるアーサーが観客の共感を呼んだのなら、…

ローズマリー・ハリス映画について

ローズマリー・ハリス(Rosemary Harris)は稀有な俳優である。1927年9月19日生まれハリスは、現在96歳であり(2024年7月現在)、9月には97歳を迎える、世界最高齢の現役俳優のひとりと言っても過言ではない。また、ハリスは舞台、映画、テレビドラマのいず…

『オッペンハイマー』感想~原子軌道を幻視する~(ネタバレあり)

まず個人的に、クリストファー・ノーランは「世代」の監督である。ノーランの映画に初めて出会ったのは『バットマン ビギンズ』。それ以降ノーラン映画を追っていて、『ダークナイト ライジング』は人生で一番楽しみな映画だった(公開前にあそこまでネット…

『アクアマン/失われた王国』で『スーパーマンⅣ』を思い出す(ネタバレなし)

『アクアマン/失われた王国』を観た。本国での前評判があまりに悪かったので心して観たが案外面白かった(逆に前評判が異常に良い映画は蓋を開けてみたら…というケースもよく見る)。アーサーとオームのブラザーフッドものとして良かったし、アクションは前…

2023年映画ベスト10

2023年に観た新作映画について。2023年(12/19現在)は旧作207本、新作144本の計351本を観ました。ベスト10はこちら #2023年映画ベスト #2023年映画ベスト10① オッペンハイマー②フェイブルマンズ③タタミ④ ヒトラーのための虐殺会議⑤ ダンジョンズ&ドラゴン…

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は結構グロテスクだったという話(ネタバレあり)

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を観た。レビューをザッと眺めたところ、ティム・バートンの『チャーリーとチョコレート工場』でジョニー・デップが演じたウォンカに比べ、本作のウォンカには毒がないという意見が大半な印象だった。ただ、自分は…

『ジョン・ウィック』と『ノーカントリー』は似ているという話

『ジョン・ウィック』シリーズは単なる復讐譚だろうか?確かに「復讐」は重要なキーワードであるが、最新作まで観て思ったのは、このシリーズは「機械論、決定論的世界から抜け出したい男の闘争(逃走)劇」だということだ。この意味で、僕の好きな『ノーカ…

『君たちはどう生きるか』感想(ネタバレあり)

自分は熱心なジブリファンでも宮﨑駿ファンでもない。という立場として、特段面白くはなかったが嫌いではなかった。映像も久石譲の控えめな劇伴も良かった。ただ、全体的には鈍重な話運びをしながらも最後は駆け足であり、中途半端な作品だという印象は拭え…

『ザ・フラッシュ』感想〜DC映画史を駆け抜く〜(ネタバレあり)

『ザ・フラッシュ』の感想です。期待よりは下回ったが好きな映画である…と言いたいが、文句もある。 良かったところはキャラクター同士のフィジカルなやりとり。核となるバリーと母の場面は良かったので、そこは安心した。世界のために母を死なせるという着…

『EO イーオー』感想(前半ネタバレなし、後半ネタバレあり)

前半ネタバレなし、後半ネタバレあり www.youtube.com ネタバレなし イエジー・スコリモフスキ監督の新作『EO』をポーランド映画祭で観た。個人的なポーランド映画祭の思い出といえば、昨年イメージフォーラムで開催された『DAU. 退行』オールナイト上映の直…

『MEN 同じ顔の男たち』感想 グロテスクな男たち(ネタバレあり)

www.youtube.com ネタバレあります 試写会にてアレックス・ガーランドの『MEN 同じ顔の男たち』を観た。なかなか良かった。 アレックス・ガーランドはこれまで「ハードSFっぽい何か」を撮ってきた。本作はその「っぽい何か」の部分を煮詰めたような印象だっ…

『ジュラシック・パーク』について話したくなったのですこしだけ(自然 vs 人工)

*『ジュラシック・パーク 』『ジュラシック・ワールド』のネタバレあり 『ジュラシック・ワールド』のラストバトルに関して、あれは「自然の摂理 vs 人工物」だという意見をよく見る。つまり、実際に存在するティラノサウルスやヴェロキラプトル(=自然物…

『悪の法則』と『ノーカントリー』についての雑感 #1

評価の差 Rotten Tomatoesで『悪の法則』の評価を見たことがあるだろうか?2022年9月28日時点ではこんな感じだ。 https://www.rottentomatoes.com/m/the_counselor_2013 一方、同じコーマック・マッカーシーの作品『血と暴力の国』を原作とした『ノーカント…

『NOPE/ノープ』感想(ネタバレあり)

いまさらながら『NOPE/ノープ』を観た。鑑賞が遅れた理由は、評判によるとこの映画は「IMAX案件」らしいのだが、なかなか都合が合わなかったからだ。確かに、できればIMAXで観てほしい作品だった。もっといえば前の方の席が良いと思う。観るのが遅かったの…

『さかなのこ』感想(ネタバレ)

さかなクンをのん氏(←素晴らしかった)が演じるということで気にはなっていた映画だが、予告編以上の情報は殆ど入れずに観た。予告編の印象だと、所謂「いい話」なのかなと思っていた。実際観てみると、確かにいい話ではあるのだが、予想以上に「奇妙」な作…

『ジュラシックワールド 新たなる支配者』感想(ネタバレあり)

本作だけでなく,本シリーズのネタバレを含みます はじめに 感想 良かったところ イマイチだったところ はじめに 『ジュラシックパーク』シリーズには思い入れがあって,自分の人生の根幹をなす作品の一つである.いまのところ,シリーズの作品は手放しでは…

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(ネタバレあり)感想

全体的には楽しめた。以下、ネタバレあり雑感。 冒頭数十分は「スパイダーマン三部作」を連想させる。結婚式といえば『スパイダーマン2 』だし、新しい恋人のいるクリスティーンと彼女に未練が残るスティーブンの関係性にも見覚えがある。街の危機を察知して…

『最後の決闘裁判』感想(ネタバレあり)

www.imdb.com リドリー・スコットがアツい.今作を観に行ったとき,上映前に同監督の『ハウス・オブ・グッチ』の予告編が流れていた.若いな(まあ,91歳のイーストウッドの新作も控えているが…). 自分が今作を楽しみにしていた理由は主に三つ.まず,今作は…

なぜ『スパイダーマン2』の電車の場面は素晴らしいのか

自分は『スパイダーマン2』が好きです。特に中盤の「電車の場面」は全アメコミ映画の中でもトップクラスに素晴らしいものになっていると思います。今回はその理由を書いていきたいと思います(Twitterでいつも呟いてることをまとめただけですが)。 *記事…

『ジョーカー』 レビュー(ネタバレあり)

www.imdb.com あらすじ 「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。 …

スターウォーズEpisodeⅨへ思うところ

前提として自分はルーカスが関わったⅠ〜Ⅵが好きです。映画としてどうかではなく、ルーカスが造った常に新しさを感じさせてくれる世界そのものが大好きです。 シークエルはどうか。「フォースの覚醒」は面白かったけれども純粋に好きな映画とは言えませんでし…

スターウォーズEpisodeⅨ サブタイトル予想

Ⅸの監督であるJJの過去作や発言から考えるとオリジナルファンを意識した作りになりそうですが、Ⅷの方向性を踏まえることも考えられる。 ファンを意識し今までのタイトルを踏まえてくる場合を考えてみます。 Ⅸと同じJJが監督した7と比べると 4 A New Hope→ル…

『ジュラシックワールド炎の王国』 ラスト考察(ネタバレ注意)

www.imdb.com ジュラシックワールド炎の王国についての批判で多いのがラスト、メイジー・ロックウッド(ベンジャミン・ロックウッドの孫娘)がボタンを押し、恐竜を解放し人間界に放つ場面だと思います。メイジーが完全に人間と同じ立場だと考えると単なる無…