otaku8’s diary

映画のこととか

2023年映画ベスト10

 2023年に観た新作映画について。2023年(12/19現在)は旧作207本、新作144本の計351本を観ました。ベスト10はこちら

 

昨年と違って、今回は割と好みに従ってフィーリングで選んでいます。

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以下、コメント

⑩『世界の終わりにはあまり期待しないで

 北九州国際映画祭にて。ラドゥ・ジュデの映画はそれなりに追っているので期待していたが、傑作で安心。いつも通りルーマニアの歴史と時事性を根底に、『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』から更に手数を増やしてきた。2つの反復が印象的だった。男性性の象徴ともなる「車両の運転」の女性達による反復と、SNSを介した「虚実」の反復。後半は長編デビュー作『The Happiest Girl in the World』を思い出させるドタバタ劇で楽しい。ウーヴェ・ボルのファンは必見。ラドゥ・ジュデの映画は『アンラッキー~』以外はあまり日本で日の目を見ていない印象なので、厳しいかもしれないが日本公開されて欲しい。

 

⑨『アルマゲドン・タイム』

 見逃していたのを年末の追い込みで。ジェームズ・グレイをちゃんと追っている訳ではないが、前作『アド・アストラ』は世間評に反してかなり良かった。今回、アンソニー・ホプキンスが孫と共にロケットを打ち上げる場面の美しさに5億点。ラストカットも5億点。

 

⑧『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい 』

 『正欲』と並んで共感度が高い。二作品ともアロマンティックやアセクシャルを描いている。そこに自分が当てはまる訳ではないが、人は恋愛・性愛をするのが「普通」であり、それに付随する話題が相手にその「普通」がある前提のもと行われる、そういう「普通」を押し付けがちな社会雰囲気に嫌気がさしている。そういう視点で、映画にえらく感情移入してしまった。『ぬいぐるみ〜』に関しては、新谷ゆづみの存在が大きい。ポスターに映る「ぬいサー」メンバーのなかで唯一こちらを直視する新谷ゆづみ。ぬいぐるみと喋らない彼女のモノローグで終わる着地が素晴らしすぎる。

 

⑦『ブラックベリー』

 Twitterの有識者たちを通じて知った作品。ひっそりと配信されていたが、めちゃくちゃ面白かった。近年のお仕事映画のなかでも特に面白い。一メーカーの栄枯盛衰をエンジニア/ビジネスマンの二軸から語っていて、これが非常に巧い。マイク・ラザリディスのCEOとしての成長と嘗てRIMにあった自由闊達な雰囲気の喪失が比例しているような描き方も良い。スティーブ・ジョブズ恐るべし。iPhoneで文字入力音をオンにして感想を書いていたので、何とも言えない気持ちになった(観た人なら伝わるはず)。

 

⑥『Pearl パール』

 とにかく好き。パールは女優を夢見ている、つまり演者としてスクリーンに輝く者になろうとするが、それが別の形で実現してしまうラストが素晴らしい。ちなみに、ラストについては抑圧されていた彼女が解放されたという考察がありこれも尤もだと思うが、あの「笑顔」の長回しを見るに自分は彼女が未だ抑圧されている(≒演技を強いられている)可能性を推したい。彼女にそれを強いているのは社会であり、彼女は演者(殺人鬼)としてスクリーンに輝いた。いずれにしても、『X』で映画というメディアを意識させたタイ・ウェストらしく、本作のテーマを見事に表していた。劇伴も素晴らしい。3作目も楽しみ。

 

⑤『ダンジョンズ&ドラゴンズ 』

 王道は人を感動させられることを示した作品。『トーク・トゥ・ミー』もそうだったが、話自体に意外性がなくても、ひとつひとつの演出が丁寧にされていれば、それだけで満足度が高い。血縁や恋愛というものを決して否定はしないが、それが全てではないとより多様な生き方を肯定し、それを説教くさくやらずにサラリとやり遂げる。そういう多種多様なキャラクターが生きているのだと実感できる世界構築に成功している。

 

④『ヒトラーのための虐殺会議』

 大傑作。感想は↓

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③『タタミ』

 東京国際映画祭にて。今年の映画のなかで、鑑賞中にのめり込んだ度合いという意味ではトップクラスの作品。胸熱スポーツドラマとポリティカルスリラーが見事に融合。一般公開されて欲しい。

 

②『フェイブルマンズ 』

 今年の映画で唯一、観終わった後に呆然としてしまった。「撮ること」の暴力や孤独を描いていながら、本人が無邪気に登場するラストにやられた。

 

①『オッペンハイマー』

 クリストファー・ノーランの集大成。初の伝記映画(正確には評伝映画)ながら、諸々の点で間違いなくノーラン映画らしさ満載の作品で、それが題材にピタリとハマっているのが凄い。特に「ジレンマを抱える男」はノーラン映画的だが、今回はその「ジレンマ」が粒子/波動の二重性みたく作品全体に浸透している。本作は「原爆のみについての映画」ではなく、既に言われているように広島・長崎は直接は描かれないが、そのジレンマが強迫観念的に迫り、逆説的に反核を示唆していた。史実の再構成の仕方も個人的には良かったと思う。日本語字幕ありでまた観たい。

 

 今年は、時代の「普通」から疎外された者たちの関わり合いについての映画が多かった気がします。『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『正欲』『Queens of the Quing Dynasty』、『窓ぎわのトットちゃん』『ファースト・カウ』もそうだといえます。

 完成度という意味では『TÁR』が凄かったですが、それが好みには直結せず。ここら辺の違いは、自分でも不思議です。