東京国際映画祭で『キル・ザ・ジョッキー』を観た。監督は『永遠に僕のもの』のルイス・オルテガ、撮影はアキ・カウリスマキ組のティモ・サルミネンである。実際観てみると、この布陣であることが誰もが納得しそうな感じであった。
映像やテンポ感は結構カウリスマキっぽい。予告にも使われている謎のダンスシーンがクセになって好きなのだが、踊る二人を見つめる三人衆のカットが挟まるのが圧倒的に良い。
『永遠に僕のもの』で、オルテガは主演のロレンソ・フェロを実に艶かしく儚げに描いた。そのアプローチは本作で破滅志向のある騎手を演じるナウエル・ペレーズ・ビスカヤートに対しても行われている。『永遠に僕のもの』はまさに破滅への道を描いていたが、本作は"一度死んで甦る"という、神話的な形で、前作より一歩進んだ形で主人公を語っていた。
前半の薬物中毒でボロボロになり生を失った姿にすらナウエルに対して魅惑的な印象を与えているが、ナウエルが変容していく(生を取り戻すといった方がいいか)中盤以降に見せる魅惑的な存在感も良かった。カウリスマキ的なテンポ感による進行は心地良く、さりげなく虚実入り乱れながら迎えるのも面白い。その虚実の反復のなかでナウエルが生を取り戻す旅の末に迎える神話的な端末が素晴らしかった。
全体的には好きだったのだが、中盤以降にやや失速を感じてしまった。前半の軽快さが続けばもっとハマったかもしれない。