otaku8’s diary

映画のこととか

『ターミネーター3』,好きですよ

 

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以下、『ターミネーター』『ターミネーター2』『ターミネーター3』のネタバレあり

 

 

 

 『ターミネーター3 』といえば酷く嫌われている映画だ.理由の一つは『ターミネーター2 』を台無しにしたというものだ.前作で命懸けでスカイネットを破壊したのに結局スカイネットは生きていてシナリオ通り人類が滅亡の危機に陥るのだから,確かに否定派の意見は分かる.ジョン・コナー役がエドワード・ファーロングからニック・スタールに代わっていること,敵のT-Xが前作のT-1000よりも弱く見えてしまうことも低評価の理由なよう.

 まずジョン・コナーだが,ニック・スタールはファーロングよりも2の未来シーンに出てくるジョンに似ている.

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T2の未来シーンに登場するジョン

 

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T3のジョン

 よく考えればT-XはT-1000よりも明らかにスペックは優っている.プラズマ砲などの武器を自在に作り出すことができるし,また,T-1000の弱点(極端な環境変化や連続した衝撃に対する弱さ)も克服されている.T2でT-Xが送り込まれていたら恐らくジョンは殺されていたと思う.実際に映画を観てみると確かにT-XはT-1000ほどの強敵感はないかもしれないが,それはT-Xが対ターミネーター 用のターミネーターであることに起因しているだろう.T-1000は人間社会へ潜入するために,全身液体金属のボディを活用してあらゆる物や人(限定的ではあるが)に擬態することができた.金属骨格を持たない,そのトリッキーな戦い方は映像的にインパクトが強い.一方,T-Xは金属骨格を持つためそれほどトリッキーに動くことはできない.殴ればちゃんと「彼女」はぶっ飛んでいく(ダメージを受けているかは別).

 そして結局人類が滅亡の危機に陥る展開について.まず,そもそも『ターミネーター 』はそれだけで完結している映画である.ターミネーターからの逃避行の中でサラは戦士になり,救世主ジョンが誕生する.サラによってT-800は破壊されるが,現場に残ったそのの部品からスカイネットが生まれる.つまり環を描いている(卵が先か?鶏が先か?).核戦争は避けられない運命だったと言える.T1が美しいのは,核戦争勃発が不可避の決定論的世界で,サラ・コナーがその運命を受け入れ,立ち向かっていく力強い姿を見せつけられるからだ.

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一作目の力強いラスト

 自分はT2が好きだが,その意味では蛇足とも言える.T2のラストは二種類あって一つはサラのモノローグで終わるよく知られたもの.

The unknown future rolls toward us. I face it, for the first time, with a sense of hope. Because if a machine, a Terminator, can learn the value of human life, maybe we can too.

機械であるターミネーターが生命の価値を理解したのだから人間もそれができるはずだ,と不確定な未来に向かう人類に対して一筋の希望を見出している終わり方.

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採用されたエンディング.不確定な未来に向かって.

 もう一つのエンディングは核戦争の危機が回避された未来にて年老いたサラが語るというもの.サラは公園のベンチに座って幸せそうに遊ぶ子供たちを眺めている.ちょうどサラが見た悪夢と対になるような未来だ.

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平和な未来に暮らすサラ

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サラが見た悪夢.核攻撃により子供諸共焼かれてしまう.

 最終的には一つ目の終わり方が採用された.その決断は正しいと思うし,自分はT2の終わり方が好きだ.そして,この決定こそが今後「正統な続編」たちを生み出していくきっかけになる.

 先程述べたように,ターミネーターの世界ではマシーンの反乱は決定事項であり,核戦争の勃発は避けられないし,サラも以前はそう思っていた.T2が感動的なのは,そのサラが機械であるT-800と愛する息子が親子のように「心」を通わせている姿を見て,そして核攻撃の悪夢を見て,決められた運命を変えようと決意するところだ.機械も命の価値を理解できるかもしれない.その希望に懸けて,そして愛する人を死なせないためにスカイネットを破壊しに行く.その行為自体が感動的だ.

 でも,やはりこの円環を断ち切ることはできない(スカイネットがなかったらジョンも産まれないことになってしまう).T2の不確定な未来へと続くエンディングのおかげで(せいで?),決定論的な世界が再びやってくる.T3のジョンは無気力で生きる目的を失っている.核戦争が回避された(実際には先延ばし)ことで,サラなき世界において自らの存在意義を見出せない.本来なら人類の救世主となるはず自分が,やってこない終末に怯えながら暮らしている.本作はそんな彼が人類のリーダー「ジョン・コナー」に成長するまでを描いく.本作では結局,審判の日を止めることは出来ずに人類は半壊する.スカイネットはネット上のソフトウェアであり,審判の日にありとあらゆるコンピュータに広がった.映画でよくあるような「破壊するべき悪の中枢」なるものはない.秀逸なスカイネット描写だ.スカイネットが暴走を始めてからラストにかけての流れは本作の中でも特に好き.スカイネットの攻撃によって突如訪れる非日常と,そこから世界が静かに終末へと向かう中で人類のリーダーとなる決意を固めるジョン.

Maybe the future has been written. I don’t know. All I know is what the Terminator taught me. Never stop fighting. And I never will. The battle has just begun.

一作目の運命論的世界に回帰する,儚く美しいラスト.

 

 他にもお気に入りのところはあって,T-Xがクレーン車に乗って暴れ回るカーチェイスシーンの物量主義的なところも好きだし,T-1のデザインは全ターミネーターの中でもかなり好きだ.上映時間が109分と短いのも良い.『ターミネーター 3』の完成度は最初の2作に及ばないものの,「ターミネーター」というシリーズに真摯に向き合った映画だと思っている.