otaku8’s diary

映画のこととか

『THE BATMANーザ・バットマン』感想(ネタバレなし)

特別試写で鑑賞。以下、簡単な感想をネタバレなしで。

 

 まず何よりも素晴らしかったのはロバート・パティンソンのバットマン/ブルース・ウェイン。彼が演じるブルースは生気が無く、亡霊のよう。その様子はまるでガス・ヴァン・サントの『ラスト・デイズ』の主人公のようだ。因みに『ラスト・デイズ』はニルヴァーナのカート・コバーンをモデルにしていて、『ザ・バットマン』の予告編でもニルヴァーナの“Something in the Way"が使われている。「ブルース・ウェイン」からは生きる気力が感じられない一方で、「バットマン」からは活力が感じられる。今回のバットマンは活動2年目で荒削り、拳に自身の存在意義を託しているように思える。彼の荒削りな感じは彼のバットスーツやバットモービル、戦い方などでも表現されていた。特に高評価ポイントはブルースがマスクを脱いだ時に露わになる目の周りの黒いペイント。これをちゃんと残してくれたことで、彼がスーツを脱いでも「バットマン」に囚われており、そこでしか生きがいを見出せない様子をビジュアルで表現しているようで素晴らしかった。本作のブルース・ウェイン像は歴代の実写シリーズのどれとも違っていて、差別化に成功していると思う。今回は「悪役に食われて」いない(自分は歴代バットマン好きだが)。探偵としてのバットマンがようやく描かれていたのも良き。

 基本的にキャスト陣は皆んな良かった。鑑賞前に特に気になっていたのはアンディ・サーキスが演じるアルフレッドとジェフリー・ライト演じるゴードンだ。実写版アルフレッドは作品ごとに段々とちょい悪感が増していて、遂にサーキスか…期待と不安があったが、とても良かった。アルフレッドといえばブルースの執事かつ元諜報員なのだが、今回は諜報員としての彼をも感じられた。また、ブルースのことをとても想っているんだろうなというのもよく伝わってきた。そもそもサーキスは同じくマット・リーヴス監督の『猿の惑星』シリーズで素晴らしいパフォーマンスをしていたわけで、心配する必要などなかった。ジェフリー・ライトのゴードンも良くて、腐敗したゴッサム・シティの数少ない良心でバットマンの理解者という立ち位置を上手く表現していた。実写版だとゲイリー・オールドマンに並んでハマり役だと思う(J.K.シモンズ版も好きだがいかんせん場面が少ない)。

 音楽も素晴らしい。マイケル・ジアッチーノが作曲したバットマンのテーマは非常に印象的。自分は、こういうヒーロー映画では印象的なライトモチーフがあるか否かで映画を好きになるかどうかが変わってくるが、その点本作はバッチリである。リドラーとキャットウーマンのテーマも良かった。既存曲だと印象的な二曲があるが、その話はネタバレありの機会にまた。

 本作のカラーはポスター同様に「赤と黒」。これはブルースの内面を表しているようにも思う。彼の心の闇(黒)と怒り(赤)。あと、実際に夜の場面が多く(可能ならドルビーでの鑑賞がオススメ)、炎などの赤色が美しく映える映画でもあった。色の使い方が巧いなと思う場面があったのだが、その話もネタバレありの機会にまた。

 全体的には監督のマット・リーヴスの色が結構出ていたように思う。リーヴスは所謂「職人監督系」だが、ちゃんと明確な作家性もある人だ。例えば彼の過去作に共通する主観ショットや印象的な長回しなどもあったし、過去作を思わせる、とある展開もあった。

 ストーリーに関して、予告編から感じられる『セブン』や『ゾディアック』感はあまりノイズにはならなかった(それらっぽさは確かにあるが)。本作は『チャイナタウン』的なノワール調で自分好みではあったが、それ故の賛否両論ポイントみたいなのもあった。三時間の上映時間、自分は長く感じず、それは本作が面白かったからだが、もう一展開欲しかったからというのも正直ある。その他引っかかった点についてもネタバレありの記事でまた書きたいと思う(多分)。

 

結論としては、好きです!