自分は熱心なジブリファンでも宮﨑駿ファンでもない。という立場として、特段面白くはなかったが嫌いではなかった。映像も久石譲の控えめな劇伴も良かった。ただ、全体的には鈍重な話運びをしながらも最後は駆け足であり、中途半端な作品だという印象は拭えない。もちろん、宮﨑駿の内省的作品として様々なモチーフを考察すれば、もっと味わい深い映画だとは思う。
自分はそこまでの思い入れはなく、変なところで引っかかったので、ここでは敢えて違う見方をしてみる。「変なところ」というのは、ラストでセキセイインコやペリカンが世に放たれたことに対してナツコは「綺麗!(記憶違いかもだがこんな感じの台詞)」と言う。つまり、外来生物である彼らの侵入を肯定している。
劇中、ペリカンもインコも完全悪とは描かれない。全体的にも、牧眞人は旅の中で善悪の曖昧な世界に触れていたように見える。外来生物も当然我々と同じ「生命」であり、彼らと共に生きる世界では、倫理的な善悪という視点では簡単に割り切ることが難しい。牧眞人は自分が悪意のある人間だと言い、元の世界=潔癖ではない世界で生きていくと告げる。世界は勧善懲悪なものではなく、私たちはそういう場所で生きていかなければいけないのだと言っているようだ。まさに、「君たち(外来生物)は(異国)でどう生きるか」という話になっていたのだ。
宮﨑駿の自伝的な見方をすれば、生まれてくる弟=宮﨑駿であり、外来生物=海外アニメーションとも見える。実際、ソ連製作『雪の女王』が宮﨑駿に強い影響を与えたらしい。