otaku8’s diary

映画のこととか

ジェームズ・ガン監督作ベスト6

 本記事は以前noteに書いたものとほぼ同じであるが,映画関連はブログにまとめたいと思ってこちらにも載せておく.

 

 

 もうすぐ『ザ・スーサイド・スクワッド  “極”悪党、集結』が公開ということで,ジェームズ・ガン監督作品のベスト6を決めてみる.何故ベスト6という中途半端な数にしたかと言えば,監督作品がそれ程多くないので全作やってしまえというノリである.完成度ではなく,あくまで好みの順位とした.

 

 

第六位
『ムービー43』

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 『グリーンブック』でアカデミー賞に絡んだことでも記憶に新しいピーター・ファレリーが製作を担当し,ファレリーを含む複数名が監督を務めたオムニバス映画.下品で下らない内容をヒュー・ジャックマンやエマ・ストーン等の錚々たるスターが演じており,大酷評されたことで有名な作品.ジェームズ・ガンはその中の"Beezel”という話を監督している.ジョシュ・デュアメルとエリザベス・バンクス演じる夫婦とその飼い猫ビーゼルがメインキャラクターで,ビーゼルは密かにその夫に恋しているというストーリー.他の話と同じく下らないことは確かだが,ガン監督作品に共通する彼の作家性が読み取れ、少し味わい深くもあった.その話はまたどこかで.

第5位
『トロメオ&ジュリエット』

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 ジェームズ・ガンのデビュー作品で,監督としてのクレジットはない(クレジットはロイド・カウフマンのみ).タイトルからも察せられるように今作はトロマ映画であり,故にエログロ何でもありな「ロミオとジュリエット」である.とにかくメチャクチャである(褒め言葉).同時に,物語の芯は意外にもしっかりしており楽しめた.愛が世界を救う!的なノリのブラックなラストの着地も良い(「良い」と言ったら倫理的にアウトな気はする).


第4位
『スリザー』

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 寄生・侵略もののSFホラーコメディ.間違いなく悲惨な状況であるにもかかわらず,シリアスになり過ぎないバランスは,やはりガン監督の作家性や手腕によるものか.クリーチャー造形は印象的で良い.トロマ出身らしい気持ち悪さ(褒め言葉)を感じさせつつ,メジャー作品のルックも併せ持つ良作.


第3位
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

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『トロメオ&ジュリエット』を作った監督がMCU作品を⁈と当時は心配されたかもしれないが,結果的には大成功となった.今作の何が凄いかといえば,SF映画やアメコミ映画におけるエポックメイキング的作品になったことである.
 今作はよくスターウォーズと似たような文脈で触れられる.スターウォーズはディストピア的作品が多かった70年代におけるSF映画の流れを,よりエンタメ性の高いものへと変えた.また,当時のSF映画によく使われていた電子音楽ではなく,オーケストラによる古き良きオリジナルの交響楽を採用した.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』にも革新的な要素が幾つか存在する.例えばカラフルな絵作り,特に極彩色でどこか有機的な宇宙船のデザインは印象的.また,懐かしいポップスがふんだんに使われていることも特徴的で,単なる挿入歌ではなく,主人公ピーター・クイルの物語に寄与する重要な要素になっているところが素晴らしい.以降,『スーサイド・スクワッド』等,今作の音楽の使い方に影響を受けたと思われる作品は多い.
 作品同士の繋がりが次第に大きくなっているMCUの中で,今作は独立性を保っており,単体で物語がちゃんと完結しているところも良き.
 また,マイケル・ルーカー,ショーン・ガン,ロイド・カウフマン(『トロメオ&ジュリエット』の監督でもある)など,ガン監督作品お馴染みの顔触れがこのような超大作で見られるのも嬉しい.

第2位
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』

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 シリーズ二作目.恐らく完成度は前作の方が高いだろう.また,今作は前作よりも内省的でキャラの掘り下げが為されており,その為か,些かウェットである.そこが合わないという人もいるだろうし,自分も本来あまりそのような湿っぽさは得意ではないのだが,本作はMCUの中でも上位に好きな映画である.
 自分はルーク・スカイウォーカーのように,正しい「選択」により障害に打ち勝つヒーローが好きだ.ガーディアンズは擬似家族である.メンバーは皆喪失を経験しており,故に彼らの絆はチームにとって非常に大切な(ある種の)アイデンティティとなっている.ピーターが迫られる,家族についての選択に対する彼のアンサーは正に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」的であり,非常に感動的である.
 俳優陣だとガン監督組のショーン・ガンとマイケル・ルーカーの魅力を再認識した.8k仕様で撮影されたという映像も非常に美しい.
 一番の不満は邦題.「VOL. 2」で良くない?

第1位
『スーパー!』

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 冴えない男がヒーローとして目覚め,悪を退治していく.何となく『キック・アス』を連想させるあらすじである.実際,両者ともに2010年に公開され,比較している人も散見された.因みに2010年には『ディフェンドー 闇の仕事人』というヴィジランテヒーローものがリリースされ(劇場未公開),こちらも冴えない男がヒーローになる話である.『スーパー!』のジャケットはポップであり,予告編もコメディ調である.確かにそのイメージは合っているが,描かれるテーマはよりシリアスであり勧善懲悪な話ではない.
 ガン監督は主人公フランクに最大限の愛情を注ぎながらも同時に彼のヒーロー活動を何処か冷めた,客観的な目線で描いている.ドラッグ・ディーラー(ケヴィン・ベーコンが最高!)に妻を奪われたフランクは,ある日観たTV番組がきっかけで宗教的イメージを見て,スーパーヒーロー「クリムゾンボルト」として覚醒する.
 クリムゾンボルトは割り込み客の頭をパイプレンチでかち割る.はっきり言ってやり過ぎである.彼は自らの信念に従って悪を成敗していくが,その行き過ぎた暴力性と,しかしながら根本的問題は解決されない様子が強調される.彼の相棒となるリビー/ボルティー(エリオット・ペイジ最高!)は彼以上に狂っており,クリムゾンボルトの鏡像的存在として,フランクは彼女を通じて自分を客観視し,自らの行いの結果を知らしめられる.
 個人的に本作はフランクに対する内省的,かつ客観的な語り口の物語であると感じた.彼の活動が正しいとは言えないし,そもそも社会をより善くするものかも分からない.しかし,一定数いるであろうクリムゾンボルトの活動によって救われた人々の存在,またその行為自体が冴えなかった彼の人生を救済する.クリムゾンボルトになることで自らの完璧な瞬間を手に入れることが出来るのだ.先に述べたように,本作にはフランク(のみならず各キャラクター)への愛で溢れている.完全に感情移入はせずとも,その優しい目線に感動し,愛おしくなってしまう作品である.